離職が起きたとき、社長はこう感じることがあります。
「急だったな」
「まさか辞めるとは思わなかった」
でも、現場で起きていることは逆です。
離職はたいてい、“問題になる前”に前兆が出ています。
気づきにくいのは、前兆が派手ではなく、むしろ静かだからです。
そして、静かな変化ほど「忙しさ」や「気のせい」で流されやすい。
離職は「事件」ではなく「プロセス」
退職は、ある日突然決まるものではありません。
多くは、次のような順番で進みます。
- 小さな疲れ(回復しにくい)
- 違和感(言語化されない)
- 諦め(相談しない)
- 静かな準備(転職サイトを見る)
- 退職(会社にとっては「急」)
会社側が気づく頃には、本人の中で「もう決めた」が固まっています。
だからこそ、社長が見るべきは退職という結果ではなく、その前の“変化”です。
前兆は「不満」ではなく「行動の変化」に出る
離職の前兆は、愚痴や不満として出るとは限りません。
むしろ多いのは、次のような行動の変化です。
- 報連相が減る(最低限になる)
- 質問が減る(自己判断が増える)
- 提案が止まる(改善より“消耗”へ)
- 会議で発言しない(存在感が薄くなる)
- 雑談が減る(職場との接点が減る)
ここで大事なのは、「良い・悪い」ではなく「以前と比べてどうか」です。
社長が見ているのは“能力”ではなく、“変化”です。
社長が見落としやすい「静かなサイン」
離職前兆の中でも、特に見落とされやすいサインがあります。
それは、本人が問題を起こさなくなることです。
例えば、こんな状態です。
- ミスは減ったが、挑戦もしなくなった
- 残業はしないが、エネルギーも感じない
- 指示されたことはやるが、主体性がない
- 空気に溶け込むが、関わりは浅い
これは「手がかからない」状態に見えるかもしれません。
でも実際は、職場に期待しなくなった状態の可能性があります。
離職の前兆を見つけても、叱るのは逆効果
前兆に気づいたとき、つい「最近どうした?」と詰めたくなることがあります。
でも、それは多くの場合、逆効果です。
なぜなら、前兆が出ている社員ほど、すでに
- 迷惑をかけたくない
- 弱音を言いたくない
- 評価を落としたくない
と思っているからです。
つまり、社長がやるべきは「正す」ことではなく、“戻れる余地”を作ることです。
社長ができる「前兆を拾う」ための3つの視点
1) 変化は「感情」ではなく「接点」で見る
「元気がない」「やる気がない」といった感情の評価はズレやすい。
見るべきは、会社との接点が減っていないかです。
- 相談が減った
- 雑談が減った
- チームへの関与が減った
接点が減るほど、離職は近づきます。
2) 問題社員より「静かな優等生」を注意する
問題が表に出る人は、まだ“会社と関わっている”ことが多い。
一番危ないのは、問題を起こさずに離れていく人です。
3) 「個人」ではなく「構造」を疑う
離職は個人の根性の問題ではないケースが多い。
業務量、優先順位、情報の整理、相談導線——構造が原因になっていることがあります。
今日から使える「離職前兆チェックリスト」
忙しい社長のために、チェックはこれだけで十分です。
「以前と比べてどうか」で見てください。
- 報連相:減っていないか
- 相談:しなくなっていないか
- 雑談:関わりが薄くなっていないか
- 提案:改善の声が消えていないか
- 表情:作り笑いが増えていないか
1つでも当てはまるなら、責めるのではなく、“戻れる導線”を作るのが先です。
まとめ:離職は「止める」のではなく「起きにくくする」
離職をゼロにするのは現実的ではありません。
しかし、離職が起きにくい構造は作れます。
その第一歩は、退職の理由を探すことではなく、
問題になる前に出ている“前兆”を拾うことです。
次回(Day4)は、離職や欠勤を「人手不足」で片づけないために、
欠勤1人分の本当のコストを社長目線で整理します。
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