ルールを増やすほど、責任が曖昧になる

問題が起きたとき、
多くの会社が最初に考える対策は
「ルールを増やすこと」です。

チェック項目を追加する。
手順書を細かくする。
報告フローを厳密にする。

一見すると、
とても合理的な対応に見えます。

しかし、
ルールを増やした結果、
かえって現場が混乱する会社は少なくありません。


理由はシンプルです。
ルールが増えるほど、
「誰が判断するのか」が見えなくなるからです。


ルールは「責任を明確にする」ためのもの

本来、
ルールの役割は明確です。

それは、
判断基準を揃え、
責任の所在をはっきりさせること。

何かが起きたとき、
「誰が、何を、どこまで判断するのか」

それを共有するために、
ルールは存在します。

ところが、
この目的がずれていくと、
ルールは別の働きを始めます。


ルールが増えると起きる三つの変化

ルールが増えすぎた組織では、
次のような変化が起きやすくなります。

  • 判断より「確認」が優先される
  • 想定外のことに誰も対応しなくなる
  • 問題が起きるまで誰も動かない

現場は、
自分で考えるよりも、
「ルールに書いてあるかどうか」を探すようになります。

結果として、
判断は止まり、
対応は遅れます。


「ルール通りにやった」が免罪符になる

ルールが細かくなるほど、
こんな言葉が増えていきます。

「ルール通りにやりました」
「手順は守っています」
「決められた範囲のことはしています」

これらは、
一見すると正しい行動です。

しかし同時に、

「それ以上は自分の責任ではない」

という線引きでもあります。

責任は、
ルールの外側に追い出されます。


ルールが増えるほど、責任は分散する

責任を明確にするために作ったはずのルールが、
いつの間にか、
責任を薄める役割を果たしてしまう。

誰か一人が判断しなくても、
「決まりだから」で済んでしまう。

すると、
問題が起きたときに、
こうなります。

「誰も間違っていない」
「でも、うまくいかなかった」

この状態が、
最も改善しづらい。


ルールは「考えなくていい仕組み」ではない

ルールは、
考えることを放棄するためのものではありません。

むしろ、
考えるための共通言語です。

状況が想定内か。
想定外か。
誰に判断を戻すべきか。

そこまで含めて設計されていないと、
ルールは機能しません。


責任が曖昧になる会社の特徴

責任が曖昧な会社には、
共通する空気があります。

  • 判断を上に上げる文化がない
  • 判断すると損をする構造がある
  • ルールを守る人ほど疲弊する

この状態では、
優秀な人ほど動かなくなります。

判断するリスクを、
無意識に避けるからです。


ルールを増やす前に、決めるべきこと

ルールを追加する前に、
必ず決めておくべきことがあります。

それは、

「誰が最終判断をするのか」

です。

この一点が曖昧なままでは、
どれだけルールを増やしても、
状況は良くなりません。

Day21で触れた
「見ると決める」判断が、
ここでも前提になります。


ルールは、責任を支える補助輪

ルールは、
責任を置き換えるものではありません。

責任を支えるための、
補助輪です。

補助輪だけ増やしても、
自転車は前に進みません。

誰がハンドルを握るのか。
どこへ進むのか。

それを決めるのは、
ルールではなく、
人です。


まとめ:ルールは増やす前に、責任を置く

ルールを増やすほど、
責任が曖昧になる。

それは、
ルールの設計が悪いからではありません。

責任の所在が、
先に決まっていないからです。

次の章(Day23)では、
面談で「やること」より
「聞かないこと」がなぜ重要なのかを
掘り下げていきます。