社員を守るとは、社員を甘やかすことではない
「社員を守りたい」
この言葉を口にする社長は多い。
無理をさせたくない。
辞めさせたくない。
安心して働ける環境をつくりたい。
どれも、経営者として自然な感情です。
しかし、この「守る」という言葉が、
いつの間にか組織を弱くしてしまうことがあります。
それは、
守ることと、甘やかすことの境界が
曖昧になったときです。
「守っているつもり」で起きていること
社員が疲れていそうだから、
あえて厳しいことは言わない。
問題がありそうでも、
波風を立てないように触れない。
本人が「大丈夫です」と言っているなら、
それ以上は踏み込まない。
一つひとつを見ると、
思いやりのある対応に見えます。
しかし、この対応が積み重なると、
別の現象が起き始めます。
問題が、
問題として扱われなくなる
のです。
守るとは「負荷を消すこと」ではない
社員を守るというと、
負荷を減らすことだと考えがちです。
仕事量を減らす。
要求水準を下げる。
期待をかけない。
確かに、一時的には楽になります。
ただし、
負荷を下げることと、
状態を守ることは同じではありません。
本来、守るべきなのは
「その人が機能し続けられる状態」
です。
負荷をゼロにしても、
役割が曖昧になり、
判断の機会が失われれば、
人は弱っていきます。
甘やかしは、成長を止める
甘やかしの特徴は、
判断を奪うことです。
失敗しそうだから、先回りする。
考えなくていいように、答えを出す。
難しい判断は、すべて上が引き取る。
短期的には、
トラブルは減ります。
しかし、
人は「考えなくていい状態」が続くと、
自分で判断しなくなります。
判断しない人は、
責任も感じなくなる
それが、
組織全体の緩みにつながります。
本当に守るとは、向き合うこと
本当に社員を守るとは、
負荷を避けることではありません。
状態が崩れ始めたときに、
見ないふりをしないこと。
声が出ていないときほど、
丁寧に観察すること。
必要であれば、
不都合な話もすること。
守るとは、
関係性を切らずに
向き合い続けること
です。
「優しさ」が遅らせてしまうもの
優しさは、
介入のタイミングを遅らせることがあります。
もう少し様子を見よう。
今は忙しい時期だから。
本人が言い出すまで待とう。
こうして時間が過ぎるうちに、
状態は静かに悪化します。
Day17で触れた
「突然の限界」は、
この遅れの積み重ねです。
守るつもりの優しさが、
結果的に限界を早める
こともある。
守ることは、厳しさを含む
本当に守ろうとすると、
時に厳しい判断が必要になります。
仕事の進め方を変える。
役割を見直す。
場合によっては、
配置転換や業務制限を行う。
それは、
決して気持ちのいい決断ではありません。
しかし、
その厳しさがなければ、
長く守ることはできない
のです。
社員は「守られたい」だけではない
社員は、
ただ守られたいわけではありません。
信頼されたい。
期待されたい。
役割を持ちたい。
甘やかしは、
これらを奪います。
守ることは、
「できる」と信じることでもあります。
その信頼があるからこそ、
人は踏ん張れます。
守る経営の本質
守る経営とは、
安全な場所を用意することではありません。
崩れそうなときに、
一緒に立て直すこと。
問題があるなら、
早めに共有し、
調整すること。
守るとは、
関係性を維持しながら、
必要な負荷を引き受けること
です。
まとめ:守ることと甘やかすことは違う
社員を守ることは、
社員を楽にすることではありません。
社員を甘やかすことでもありません。
本当に守るとは、
向き合い続けること。
そして、
必要なときに、
必要な判断をすることです。
次の章(Day25)では、
「全員を救おうとする社長」が
なぜ会社を疲弊させてしまうのかを
掘り下げていきます。
