「うちは人が少ないから、残業は仕方ない」「忙しい時期だけだから」と言いながら、気がつけば年中誰かが残業している――。そんな職場は少なくありません。
しかし、健康経営の視点で見ると、残業時間の多さは「がんばっている証」ではなく、じわじわと企業の体力を削るリスクでもあります。

この記事では、なぜ残業時間を減らした方がいいのか、その理由を健康・生産性・経営の3つの視点から整理します。


1.残業は「睡眠負債」を増やし、生産性を下げる

① 睡眠時間が削られると判断力が落ちる

残業が続くと、家に帰る時間が遅くなり、その分だけ睡眠時間が削られます。
睡眠時間が足りない状態では、集中力・判断力・記憶力が確実に落ちます。本人は「なんとかなる」と感じていても、実際にはブレーキの効かない状態で走っているようなものです。

② ミスが増え、やり直しでさらに時間を失う

疲れた状態では、簡単な確認漏れや入力ミスが増えます。
その結果、やり直し・クレーム対応・フォローに時間を取られ、ますます残業が増える悪循環に陥ります。

③ 翌日のパフォーマンスも落ち続ける

一晩だけの残業ならまだしも、それが慢性化すると、翌日以降も疲れを引きずります。
「常に60〜70%くらいの力で働いている」状態が続けば、会社全体の生産性も当然下がっていきます。


2.残業は「なんとなく不調」を増やし、健康リスクを高める

① 肩こり・腰痛・頭痛などの慢性症状

長時間のデスクワークや立ち仕事が続くと、筋肉の緊張が続き、肩こり・腰痛・頭痛が起こりやすくなります。
「薬を飲めばなんとかなる」という状態を放置すると、慢性化して仕事の質にも影響してきます。

② 胃腸トラブル・睡眠障害・メンタル不調

残業が続くと、夕食が遅くなる・コンビニ食が増える・寝る直前まで仕事モードといった生活リズムになりがちです。
その結果、胃もたれ・便秘・下痢・寝つきの悪さ・夜中に目が覚める、といった症状が出やすくなります。

③ 病院に行くほどではないが「常にしんどい」社員が増える

これらの症状は、すぐに医療機関にかかるほどではない場合が多く、“なんとなく不調”のまま働き続ける人を増やします。
この状態が会社全体に広がると、欠勤や休職が増える前から、じわじわと生産性が落ちていきます。


3.残業が多い職場は「人が定着しにくい」

① 若手ほど「時間の拘束」に敏感になっている

今の採用市場では、「給料」だけでなく「働きやすさ」や「自分の時間の確保」が重視されています。
残業が当たり前の職場は、若手ほど早く辞めていく傾向があります。

② 採用コストがじわじわ経営を圧迫する

1人が辞めるたびに、募集・面接・教育にコストと時間がかかります。
「残業が多くて人が続かない」状態を放置すると、常に採用と教育に追われる会社になりかねません。

③ 健康経営は「採用力アップ」にもつながる

一方で、「残業を減らす」「健康に配慮している」会社は、求人票の印象も良くなります。
健康経営の取り組みは、現場のためだけでなく、採用や企業イメージの向上にもつながる投資と言えます。


4.健康経営の視点で見る「残業削減」の進め方

① まず“現状を見える化”する

いきなり「残業をゼロにしましょう」と言ってもうまくいきません。
最初のステップは、

  • 部門ごとの残業時間
  • 残業の理由(突発か、慢性的か)
  • 繁忙期と平常時の差

などを整理し、どこで負荷がかかっているのかを把握することです。

② タスクと優先順位を整理する

残業の中には、「本当に今日やらなければならない仕事」と「明日でもよかった仕事」が混ざっていることが多くあります。
毎日5分でも、上司と一緒に「今日やること」を3つに絞るだけでも、残業時間は変わってきます。

③ 小さな休憩と働き方の工夫を取り入れる

長時間ダラダラ働くよりも、集中して働き、短く休むほうが効率は上がると言われています。
1時間に1回、1〜2分だけ席を立つ/水分を取る/深呼吸をする――こうした「マイクロブレイク」は、残業削減と健康維持の両方に役立ちます。


5.残業削減は“コストカット”ではなく“健康投資”

残業を減らす取り組みは、一見すると「働く時間を減らす=仕事が回らなくなる」不安を伴います。
しかし、健康経営の視点で見れば、残業削減は

  • ミスの減少
  • 生産性の向上
  • 離職率の低下
  • 医療費・欠勤コストの削減

といった中長期的なメリットを生む“投資”です。

社員の健康は、そのまま会社の力になります。
まずは、残業時間を「当たり前」ではなく、「見直すべきサイン」として捉えてみることが、健康経営の大きな一歩になります。

「残業が続いている」「なんとなく不調の社員が増えている」と感じたら、働き方と健康状態の両方を見直すタイミングかもしれません。