社長が背負いすぎると、社員は考えなくなる
社長が優秀で、責任感が強く、現場の状況を誰よりも把握している会社ほど、ある特徴的な状態に陥りやすくなります。
それは、社長自身が「自分が判断したほうが早い」「自分が引き取ったほうが安全だ」と感じる場面が増え、結果として判断や調整、責任のほとんどを自分の肩に乗せてしまう状態です。
仕事は止まらない。
トラブルが起きても、最終的には社長が何とかする。
外から見れば、頼れるトップがいる安定した会社に映るでしょう。
しかし、その内側では、組織の力を静かに削っていく変化が確実に進んでいます。
社長が背負えば背負うほど、社員は考えなくなっていく。
これは能力や意欲の問題ではありません。
組織の構造が生み出している現象です。
「考えなくても回る」状態が定着していく
社長が最終判断を引き取り続ける組織では、現場に独特の安心感が生まれます。
迷ったら聞けばいい。
決めきれなければ上に上げればいい。
判断を間違えるリスクを、自分で負わなくていい。
この安心感は、短期的には組織を安定させます。
衝突は減り、大きな失敗も起きにくくなります。
ただし同時に、社員の中には次のような行動基準が静かに定着していきます。
「自分で考えるより、社長に委ねたほうが安全だ」
これは怠慢ではありません。
環境に対する、ごく自然な適応です。
判断力が失われているのは、社員ではない
「最近の社員は考えなくなった」
「指示待ちが増えた」
こうした言葉が出てくることがあります。
しかし実際には、社員の思考力が低下したわけではありません。
考えなくても成立する構造が、先に出来上がってしまった
それだけです。
判断をすれば責任が発生する。
失敗すれば修正が必要になる。
一方で、社長がすべて引き取ってくれる環境では、そうした負荷は最初から存在しません。
人は、より負荷の少ない選択肢が常に用意されていれば、そちらを選びます。
それは人間として自然な行動であり、責められるものではありません。
背負うほど、依存は強くなる
社長が判断を引き取るたびに、現場は一つ楽になります。
しかしその「楽」は、組織としての軽さではなく、思考を手放したことによる軽さです。
どこまで決めていいのか分からない。
失敗したときの責任範囲が曖昧。
その結果、最初から判断しない、という行動が選ばれます。
依存は、甘えからではなく、設計から生まれる。
社長が疲弊する本当の理由
社長が疲れる理由は、単に仕事量が多いからではありません。
常に答えを求められ、最終判断を引き受け、誰にも委ねられない状態が続くこと。
これが、精神的な消耗を生みます。
さらに厄介なのは、背負っているにもかかわらず、人が育っていないのではないかという違和感です。
背負えば背負うほど、組織が自分から離れていく感覚
この感覚が、社長を孤独にします。
まとめ:社長が一歩引いたところに、組織は育つ
社長が背負いすぎると、社員は考えなくなります。
それは社員の能力不足ではなく、構造の問題です。
社長が一歩引いた場所に、組織の成長余地が生まれる。
次の章(Day27)では、「辞めさせない経営」が必ずしも正解ではない理由を掘り下げていきます。
