ミスが増えたとき、叱る前に見るべき数字
現場でミスが続くようになると、社長の頭にはさまざまな考えが浮かびますが、その多くは「なぜ注意しているのに改善しないのか」「なぜ同じようなミスが繰り返されるのか」といった、感情と判断が入り混じった問いではないでしょうか。
ミスが発生すれば、報告を求め、原因を聞き、再発防止策を考え、場合によっては注意や叱責を行うことは、経営者として自然な反応であり、決して間違った行動ではありません。
それでもなお、ミスが減らず、むしろ形を変えて続いていくとき、社長自身の中に「何か見方を間違えているのではないか」という違和感が生まれ始めます。
この章で扱いたいのは、まさにその違和感です。
ミスは「原因」ではなく、最初に見える結果である
多くの職場で、ミスは「本人の不注意」や「確認不足」として処理されがちですが、実際にはミスは突然生まれるものではなく、現場の状態が一定のラインを越えたときに、最初に目に見える形で表に出てくる結果にすぎません。
人は基本的に、ミスをしたいと思って仕事をしていませんし、叱られたいとも思っていませんが、それでもミスが増えるということは、意識や態度ではなく、仕事を処理するための余力がすでに削られている可能性を疑う必要があります。
つまり、ミスとは「原因」ではなく、現場の余力が尽き始めたことを知らせるサインなのです。
叱責や注意が、ミスを減らさない理由
ミスが起きたときに注意をすること自体は、間違いではありませんが、問題はそれが唯一の対応になってしまうことです。
注意や叱責が中心になる職場では、社員は「間違えないこと」を最優先に考えるようになり、その結果として、判断が遅れたり、報告が後回しになったり、確認を過剰に重ねるようになります。
この状態では、一見するとミスが減ったように見えることもありますが、実際にはミスが隠れるだけで、現場のスピードと柔軟性は確実に落ちていきます。
叱るほどに、ミスは表に出にくくなり、出てきたときには、より大きな形になっているという悪循環が生まれるのです。
ミスが増える前に、必ず落ちている数字がある
ここで重要なのは、ミスそのものを数えることではなく、ミスが表に出る前に、現場で何が起きているかを数字として捉える視点を持つことです。
多くの場合、ミスが増え始める前には、次のような変化がすでに起きています。
- 残業時間が少しずつ伸びている、あるいは特定の人に集中している
- 業務を同時並行で進める場面が増えている
- 確認や差し戻しの回数が増えている
- 「急ぎ」が常態化している
これらは、決算書には表れませんが、現場の余力が削られていることを示す、非常に重要な数字です。
ミスは、これらの数字が一定の水準を越えたあとに、ようやく表に出てきます。
社長が見るべきは「件数」ではなく「分布」
ミスの件数だけを見ていると、「今月は多い」「先月より減った」といった表面的な判断に終始してしまいますが、経営として重要なのは、どこで、誰に、どのように負荷がかかっているかという分布を見ることです。
例えば、特定の部署や特定の人に修正作業が集中していないか、残業が一部の人だけに偏っていないかといった視点は、ミスの背景を理解するうえで欠かせません。
分布を見ることで初めて、ミスが個人の問題ではなく、構造の問題として見えてきます。
ミスが出始めたときは、売上への影響が始まっている
ミスが増えるということは、現場のスピードが落ち、判断が遅れ、仕事の質が不安定になっているということであり、これは遅かれ早かれ、売上や顧客満足度に影響を及ぼします。
ただし、この段階ではまだ、売上という数字にはっきりと表れないことが多く、社長の判断が遅れやすいのも事実です。
しかし、ここで手を打てるかどうかが、その後の展開を大きく分けます。
叱る前に、数字で現場を見る
ミスが増えたときに、まずやるべきことは、誰かを叱ることではなく、現場の数字を静かに見直すことです。
その数字は、売上や利益のような結果の数字ではなく、日々の業務の中で生まれている、小さな変化の数字です。
これらを見直すことで、ミスは「正すもの」ではなく、「知らせてくれるもの」として捉え直すことができるようになります。
まとめ:ミスは、経営判断を促すサインである
ミスが増えたとき、それは誰かの能力や姿勢の問題ではなく、現場の余力が限界に近づいていることを示すサインであり、社長に判断を促すために表に出てきた現象です。
このサインを叱責で押さえ込むのか、それとも構造を見直すきっかけにするのかで、会社のその後は大きく変わります。
次の章(Day8)では、こうした現場の変化が、最終的に売上にどのような影響を与えていくのかを掘り下げていきます。
