面談は「やること」より「聞かないこと」が重要
面談という言葉を聞くと、多くの会社はまず「何を聞くべきか」を考え始めます。
どんな質問を用意するか。
どの順番で話を進めるか。
沈黙が生まれないよう、どんな話題を挟むか。
面談を丁寧に行おうとするほど、準備する項目は増えていきます。
一見すると、それはとても誠実で、社員に向き合っている姿勢のように見えます。
実際、「ちゃんと話を聞いている会社」だと評価されることもあるでしょう。
しかし、面談が形骸化している会社を見ていくと、ある共通点が浮かび上がります。
それは、「聞くこと」に力を入れすぎて、「聞かなくていいこと」を選別できていない、という点です。
質問が増えるほど、本音は出にくくなる
面談で質問が次々に出てくると、場の空気は一見なごやかになります。
仕事の進捗はどうか。
困っていることはないか。
今後やってみたいことは何か。
話題が途切れず、会話が続いているように見えるため、「良い面談だった」という感想が残りやすい。
ところが、質問が多くなればなるほど、相手の頭の中では別の思考が始まります。
「どう答えるのが正解だろうか」
「この質問の意図は何だろうか」
「余計なことを言って評価を下げないだろうか」
この瞬間、面談は対話ではなく、選択式の受け答えに変わります。
言葉は出ていても、本音は奥に引っ込んでいく。
それが、質問過多の面談で起きている現象です。
「オープンな質問」が安全とは限らない
よく使われる「オープンな質問」は、一見すると本音を引き出すための有効な手段に見えます。
「最近どう?」
「何か困っていることはある?」
「改善したい点はある?」
しかし、これらの質問は本当に“自由”でしょうか。
実際には、これらは答えを求める質問です。
答えを用意できなければ、相手は無難な言葉を選びます。
問題があっても、うまく言語化できなければ「特にありません」という回答になる。
Day16で触れた「大丈夫です」という言葉が、ここでも自然に出てきます。
それは嘘ではありません。
ただ、「答えられる範囲での正解」を選んでいるだけなのです。
面談で最も多い失敗パターン
面談後によく聞かれる言葉があります。
「ちゃんと話は聞いた」
「特に問題はなさそうだった」
その時点では、確かに大きな違和感はなかったかもしれません。
しかし数週間、あるいは数か月後に、欠勤が増えたり、パフォーマンスが落ちたり、突然の退職につながったりする。
このとき初めて、「あのときの面談は何だったのか」と振り返ることになります。
問題だったのは、話した内容ではありません。
話されなかったことに、目を向けられなかったことです。
言葉が少なかった理由。
話題を深めなかった背景。
沈黙が生まれた瞬間の空気。
それらは、質問を重ねるほど見えなくなっていきます。
聞かないほうがいい質問がある
面談には、あえて聞かないほうがいい質問があります。
「なぜできなかったのか」
「どうしてそう判断したのか」
これらは、原因や理由を求める質問です。
原因を問われた瞬間、人は防御的になります。
正しさを説明しようとし、本音よりも理屈を並べるようになります。
面談は、事情聴取の場ではありません。
面談の本質は、評価でも改善指導でもなく、状態の把握です。
状態を見るためには、説明を求めすぎないことが重要になります。
沈黙は「失敗」ではなく「情報」
面談中の沈黙を怖がる人は少なくありません。
沈黙が続くと、「何か話さなければ」「場を回さなければ」と焦りが生まれます。
しかし、沈黙そのものが重要な情報です。
言葉が出てこない。
考えがまとまらない。
話す余力が残っていない。
それらはすべて、その人の状態を示しています。
沈黙を埋めないことが、最も正確な観察になることもある。
質問で沈黙を消してしまうと、この情報は失われます。
面談は「解決策を足す場」ではない
面談をしていると、ついアドバイスをしたくなる瞬間があります。
「こうしたほうがいい」
「それは考えすぎだ」
「もっと割り切っていい」
どれも善意から出た言葉です。
しかし、アドバイスが増えるほど、相手は話さなくなります。
面談が「指導の場」になると、本音は引っ込みます。
面談の役割は、解決策を出すことではありません。
解決が必要な状態かどうかを見極めることです。
「聞かない」は、放置ではない
「聞かない」と聞くと、冷たい対応に感じるかもしれません。
しかし、ここで言う「聞かない」とは、関心を持たないことではありません。
余計な問いを足さず、
余計な解釈を加えず、
相手の状態をそのまま受け取る。
それは、非常に集中力を要する関わり方です。
聞かないことは、最も高度な面談技術の一つです。
まとめ:面談は余白を残す場
面談は、話を引き出すための場ではありません。
余白を残し、状態をそのまま観察する場です。
「やること」を増やすより、
「聞かないこと」を決める。
それだけで、面談の質は大きく変わります。
次の章(Day24)では、
「社員を守る」とは何か、
甘やかすこととの違いを掘り下げていきます。
